父母・祖父母から住宅取得資金を贈与されたときに非課税になる制度とは?
直系尊属(父・母など)から住宅取得資金を贈与された(もらった)場合、最大3,000万円まで贈与税が非課税になる制度があります。
「住宅取得資金等の贈与税の非課税制度」と呼ばれる制度です。
住宅取得資金等の贈与税の非課税制度を利用するための申告方法や注意点についてまとめています。
これからマイホームを購入する予定がある方はぜひご確認ください。
この記事の目次
1.住宅取得資金の贈与とは?
例を使ってご説明します。
Aさんは住宅を新築することにしました。
ところが資金が足りないので、祖父(直系尊属)から、1,000万円の資金をもらいました。贈与日は平成28年7月10日でした。贈与税がかかると思っていましたが、非課税になりました。

直系尊属からの住宅取得等資金の贈与では、一定の要件を満たすと非課税になることがあります。良質の住宅(省エネ性、耐震性、高齢者配慮など)という条件に合致し、居住用住宅の新築などであれば、Aさんの場合は最大1,200万円の贈与が非課税になります。
上記の例ですと贈与額が1,000万円なので、非課税枠を超えていません。つまり、Aさんは贈与税を払わなくていいのです。
この制度を利用すれば、贈与税額を減額することが可能です。
また、この制度のほかにその年の1月1日から12月31日までの間に贈与があった場合、110万円以内であれば非課税とされる「贈与税の基礎控除枠」があるのですが、住宅取得資金のための贈与の非課税制度は暦年贈与の基礎控除と併せて利用することも可能です。その場合、Aさんの例だと上限1,310万円の贈与に対して非課税とすることができるのです。


この2つの非課税枠を利用した場合、例えば上記のAさんが祖父から受けた住宅購入のための贈与が2,500万円だった場合、2,500万円から非課税枠の1,310万円を差し引いた1,190万円に対してのみ課税されるということになります。
住宅取得資金の非課税枠と贈与税の基礎控除(暦年贈与)の非課税枠を併用して利用することで、1,310万円が非課税となるのです。
【ここまでのポイント】 贈与者が祖父か祖母だとして、一定の金額を住宅取得資金として孫に贈与します。その資金すべてで、居住用ないしは居住予定の住宅を新築・購入などすれば、一定額までは非課税になります。 |
※直系尊属という言葉になじみがない方も多いことでしょう、次の章で詳しく解説するので、頭に入れておいてください。
2.直系尊属とは、どういう人を指すのか?
直系尊属に当たるのは、次のような人です。
まず、直系でなければいけません。次に、自分よりも上の世代である必要があります。同じ世代や下の世代ではだめです。三番目は、血族でなければなりません。
これらの条件に該当するのは、父母や祖父母などになります。配偶者の父母や祖父母は尊属ではありますが、直系ではありません。

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3.非課税限度額はいくら?
消費税率の区分 | 住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 一般の住宅 |
---|---|---|---|
家屋に対する消費税率が 8%の場合など(※) | ~2015年末 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2016年1月~2020年3月 | 1,200万円 | 700万円 | |
2020年4月~2021年3月 | 1,000万円 | 500万円 | |
2021年4月~12月 | 800万円 | 300万円 | |
家屋に対する消費税率が 10%の場合 | 2019年4月~2020年3月 | 3,000万円 | 2,500万円 |
2020年4月~2021年3月 | 1,500万円 | 1,000万円 | |
2021年4月~12月 | 1,200万円 | 700万円 |
(※:個人どうしの売買で消費税がかからない場合や、土地だけを購入した場合も含みます)
【住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日】
非課税制度の適用を受けるためには、2021年(令和3年)12月31日までに住宅取得等資金の贈与を受けるだけではなく、住宅用の家屋の新築等に係る契約を同日までに締結している必要があります。
【省エネ等住宅】
省エネ等住宅とは、エネルギー使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋、大規模な地震に対する安全性を有する住宅用の家屋、又は高齢者等が自立した日常生活を営むのに特に必要な構造及び設備の基準に適合する住宅用の家屋をいいます。
国税庁HP|タックスアンサー No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
4.住宅取得資金贈与の非課税枠を利用することによるメリットとは?
住居を購入するにあたって、非常に高額な金額の借り入れを銀行などの金融機関へ依頼することとなります。その際、この非課税枠での贈与を受けることによって頭金や経費に充てることができるため、借入額が少なくて済むのはもちろん、銀行への借入申込みの金額も低く抑えることができます。
結果して、借入のハードルが低くなり、借り入れがしやすくなるなどのメリットがあります。
5.住宅取得資金贈与の非課税枠を利用するための条件は?
この住宅取得資金贈与の非課税枠を利用するためにはいくつかの条件を満たすことが必要です。以下がその条件となります。
☆直系の父母、祖父母からによるもの。
☆贈与を受けた本人が、贈与を受けた翌年3月15日までに住宅に居住していること。
☆贈与を受けた翌年3月15日までに居住できなくても、その後必ず居住できると見込まれること。
☆贈与を受ける者のその年の所得金額合計が2,000万円以下であること。
☆贈与を受ける際に日本国内に住所がある者。
☆贈与を受ける年の1月1日において、20歳以上の者。
☆贈与を受けたものが、取得した住宅取得等資金の全額を居住用家屋の新築や購入、増改築に使用すること。
以上が住宅取得資金贈与の非課税枠を利用するための条件となります。この非課税枠は新築、リフォームの資金として利用できる反面、土地の購入には利用できないので注意が必要となります。
合計所得は給与所得だけではなく、不動産所得や事業所得がある場合それらも含めた「合計の所得」となります。この計算もしっかりと行いましょう。
また、この後解説しますが、この非課税枠は質の高い住宅として省エネの住宅であるか、それ以外の住宅であるかなど、住宅の種類によって控除額が変わります。不安な場合には税理士に相談してみるのも良いでしょう。贈与を受けた翌年3月15日には居住しているか、その見込みがあることも条件となるため、贈与を受けるタイミングも考慮するべき事柄となります。
住宅取得資金として認められるための要件とは?
住宅取得資金贈与の非課税枠を利用するための条件に「贈与を受けたものが、取得した住宅取得等資金の全額を居住用家屋の新築や購入、増改築に使用すること」というものがありますが、では住宅取得等資金として認められる使い道はどういったものかというと、具体的には下記のようなものがあげられます。
〇居住用家屋の新築、または建築してからまだ使われていない居住用家屋の購入
〇中古家屋の購入
〇家屋の増改築
上記のケースで、家屋に付随して土地や土地の上の権利を取得する場合、土地の購入費用も含まれます。
6.住宅取得資金贈与の非課税枠を利用するための申告方法

贈与税の基礎控除である110万円については申告する必要はないとされていますが、住宅取得資金贈与の非課税枠を利用する際には申告が必要となります。
よくある間違いで、贈与を受けた金額が非課税額以下だったので申告は必要ではないと思われることがありますが、非課税限度額以下で住宅取得資金贈与を利用するという場合でも、申告しなければ適用はされず課税対象となってしまうので贈与を受けた翌年の確定申告では必ず申告するようにしましょう。
なお、その確定申告の際に必要となる書類は下記のようにいくつかあるのでしっかりチェックして申告することが大切です。
住宅取得資金贈与の非課税枠を利用するための申告書類

申告書の記入においては、添付されている記入要項に沿って記入していくことで提出が可能になります。
また、住民票の写し、戸籍謄本、契約書や登記事項証明書は、この非課税枠を利用することのできる条件である、「贈与された本人が居住しているか」「購入した住宅が贈与された本人の名義になっているか」などを確かめるためのものとなります。なお、申告は贈与を受けた翌年の確定申告時期である2月1日から3月15日までにすることとなりますが、申告書などの記入に自信がない場合は専門である税理士に相談して準備することも検討しましょう。
7.住宅取得資金贈与の非課税枠は夫婦別々に利用できる?

夫婦それぞれの直系の父母や祖父母から受ける住宅取得資金贈与の非課税枠を夫婦別で利用することも可能です。また、その場合であっても贈与税の基礎控除も各々で利用できるので、非課税枠を大幅に広げることが可能となります。
しかしその場合には条件があり、取得した住宅の名義を贈与額によって夫婦共有にすることが必須です。
仮に住宅資金贈与非課税枠を夫婦別に利用したのに取得した住宅が夫のみの名義であった場合には、非課税枠以上の金額に贈与税が課せられてしまうこととなってしまうので注意が必要です。
まとめ
以上のような手続きで、住宅取得等資金贈与が非課税になります。条件が複雑だったり購入する住宅の種類で非課税限度額が変わってきたりと少し煩わしい部分もありますので、面倒だと思う人は、税理士に依頼しても良いでしょう。
申告に慣れていない人が犯しやすいミスを防ぎ、条件や手続きの手違いで利用できなくなってしまう事態を避けたいという方も、税理士に頼むと安全だと言えるでしょう。
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