相続争いで兄弟の関係が泥沼化!兄弟が相続でもめる原因とは?

相続争いがひとたび起こると、仲の良かった兄弟でも関係が悪化して絶縁状態になる場合があります。
兄弟どうしで相続するケースとしては、以下の二つが考えられます。
● 亡くなった人の兄弟が遺産を相続するケース
● 亡くなった親の遺産を兄弟で相続するケース
これから、兄弟どうしで相続するケースでなぜ相続争いが起こるのか、
また、相続争いを避けるにはどのようにすればよいかを具体的にご紹介します。
兄弟どうしのトラブルが心配になっている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
この記事の目次
1.相続争いを避けるには法定相続人と法定相続分を確認
まず、法律上、どういった順番で相続人と相続分(相続割合)が決まるかを確認しておきましょう。
相続人になれる人は民法で次のように定められています。
常に相続人 |
配偶者 |
第一順位の相続人 |
子 |
第二順位の相続人 |
父母 |
第三順位の相続人 |
兄弟姉妹 |
死亡した人の配偶者は常に相続人になるほか、死亡した人に子がいるか両親が健在であれば優先して相続人になります。
したがって、兄弟姉妹が相続人になるケースは比較的少ないといえるでしょう。

相続人ごとの財産の相続分は次のとおり定められています。同じ順位の相続人が2人以上いるときは、相続割合を人数に応じて等しく分けます。

2.亡くなった人の兄弟が遺産を相続するケース
亡くなった被相続人に子がなく両親も死亡している場合は、兄弟が遺産を相続します。 ただし、被相続人に配偶者がいるかいないかによって、相続人の範囲と相続分は異なります。
(1)亡くなった人に配偶者がいない場合
亡くなった被相続人に配偶者がいない場合、つまり、続柄の近い家族が兄弟のみという場合は、兄弟が遺産を相続します。
残された兄弟が1人の場合は、その人が相続財産をすべて相続します。兄弟が2人以上いる場合は、人数で割ったものが相続分となります。
このようなケースでは、兄弟どうしでトラブルが起こる可能性があります。

(2)亡くなった人に配偶者がいる場合
被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と兄弟が遺産を相続します。
このとき、配偶者は相続財産の4分の3を相続し、兄弟は残りの4分の1を相続します。兄弟が2人以上いる場合は、4分の1を人数で割ったものが相続分となります。
このようなケースでは、配偶者は義理の兄弟と遺産相続について話し合うことになります。兄弟どうしで相続する場合に比べて話し合いが難しくなり、トラブルが起こる可能性は高くなります。

(3)相続人になるはずの兄弟がすでに死亡している場合
相続人になるはずの兄弟がすでに死亡している場合は、その子、つまり甥や姪が代襲相続することになります。
代襲相続については、下記の記事を参照してください。
3.亡くなった親の遺産を兄弟で相続するケース
亡くなった親の遺産相続では、被相続人の配偶者、つまりもう一方の親が健在であるかどうかによって、相続人の範囲と相続分は異なります。
(1)もう一方の親がすでに死亡している場合
もう一方の親がすでに死亡している場合は、子が遺産を相続します。
子が2人以上いる場合は、兄弟どうしで遺産を分け合います。相続分は相続財産を人数で割ったものとなります。
このようなケースでも、兄弟どうしでトラブルが起こる可能性があります。間に入って仲を取り持つ親がいないため、相続争いが泥沼化する危険性もあります。

(2)もう一方の親が健在の場合
もう一方の親(被相続人の配偶者)が健在の場合は、配偶者と子が遺産を相続します。
この場合は、配偶者が相続財産の2分の1を相続し、子は残りの2分の1を相続します。 子が2人以上いる場合は2分の1を人数で割ったものが相続分となります。
このようなケースでも、兄弟どうしでトラブルが起こる可能性がありますが、親が間に入って仲を取り持てば解決に向かうこともあります。

4.相続争いで兄弟がもめる原因とは?
相続争いで兄弟どうしがもめる原因にはどのようなものがあるでしょうか。この章では、兄弟で相続争いが起こる原因の代表例をご紹介します。
(1)遺産を公平に分けることができない
相続する遺産の多くが現金であれば、あまりもめることはありません。兄弟どうしで遺産を公平に分けることができるからです。
問題となるのは遺産の多くが不動産の場合です。不動産があると、遺産を公平に分けることは難しくなります。
特に、遺産の大部分が自宅であって相続人の誰かがそこに住んでいる場合は、相続人一人ひとりにとって有利になる条件が異なるため、相続争いが起こりやすくなります。
下の図の例は、父が時価1億円の土地付き建物と現金2,000万円を残して死亡したケースです。相続人は母(配偶者)と長男・次男ですが、長男は夫婦で両親と同居していました。

このとき、次男が法定相続分のとおりに遺産分割することを要求すれば、相続争いに発展する可能性があります。
次男の法定相続分は、遺産総額1億2,000万円の4分の1にあたる3,000万円です。しかし、現金は2,000万円しかないため、次男に遺産を与えるためには土地付き建物を売却しなければなりません。
長男は自分たちが住む家を処分するわけにはいかないため、次男と争うことになってしまいます。
このように、相続争いは多額の財産を持つ家庭だけでなく、マイホームがある一般的な家庭でも起こり得るのです。

(2)話し合いができていない
兄弟どうしの相続であっても、話し合いによる意思疎通がうまくいかなければ相続争いに発展します。配偶者と兄弟が共同で相続する場合も同様です。
遺産分割協議で遺産の分配を決めるときや相続の手続きを進めるときは、多くの場合で誰か一人が主導権を握ります。
このとき、相続人どうしの意思疎通が不十分であれば、他の相続人は次のような気持ちになります。
- ● 遺産が公平に分けられているかどうかがわからない。
- ● 相続の手続きがどの程度進んでいるかがわからず、相続税を払うべきかどうかも知らされない。
ひとたび疑心暗鬼に陥ってしまうと、兄弟どうしであっても意思疎通は困難になります。
(3)兄弟の嫁が口を出す
相続人でもないのに遺産分割協議に口出しする人がいれば、相続争いに発展します。 たとえば、兄弟の嫁(配偶者)があれこれ口出しすれば、まとまる話もまとまらなくなってしまいます。
(4)思いもよらない兄弟が現れた
家族関係が複雑な場合も相続争いが起こりやすくなります。たとえば、次のようなケースです。
- ● 被相続人に愛人がいて非嫡出子(隠し子)がいる
- ● 離婚した前の妻との間に生まれた子供がいる
- ● 家族に内緒で養子縁組をしている
非嫡出子や前妻の子供、養子はすべて実の子と同じ立場で相続人になります。 このようなときは、ほとんど面識のない者どうしで遺産相続について話しあうことになります。 思いもよらない兄弟が現れたことで相続分が減るため、トラブルは避けられないといってよいでしょう。

5.兄弟の相続争いを避けるには
兄弟どうしでひとたび相続争いが起こると、関係が悪化して泥沼化することもあります。家族にとって望ましいことではなく、できる限りトラブルは避けたいものです。 この章では、兄弟どうしで相続する場合や配偶者と兄弟で相続する場合に、相続争いを避けるための対策をご紹介します。
相続争い回避策(1)遺言書を作成する
兄弟の相続争いを避けるためにまずとるべき対策は、遺言書の作成です。 遺言書があれば、原則としてその内容のとおりに遺産を相続することになります。
遺言書は資産家だけが書くものという印象を持つ人も多いですが、資産家でなくても遺言書を作成しておくことをおすすめします。特に、子供がいない夫婦の場合は、必ず遺言書を作成しておきましょう。
遺言書がなければ、夫の死亡後に、妻が義理の兄弟と遺産相続について話し合わなければなりません。 妻に余計な負担をかけずに確実に財産を継がせたいのであれば、できるだけ早く遺言書を作成するようにしましょう。
兄弟どうしで相続することになる場合でも、マイホームがあれば遺言書を作成しておくとよいでしょう。
遺言書については、下記の記事で詳しく解説しています。 遺言書にはどんな効力があるの?遺言書の種類と効力について
(2)生命保険に加入する
兄弟どうしの相続争いを避けるための対策としては、生命保険への加入も有効です。
自宅以外に目立った資産がない場合ではトラブルが起こりやすくなりますが、生命保険に加入することで遺産を分け合うための資金を用意することができます。
下の図のケースでは、長男が不動産を相続する代わりに、長男から次男に現金を渡しています。長男がこの現金を持っていればよいですが、持っていない場合は長男を受取人にした生命保険を活用して準備します。
被相続人が死亡すれば長男に保険金が支払われ、次男に渡す現金に充てることができます。

6.起きてしまった相続争いを解決する方法
いくら事前に対策をしていても、兄弟どうしの相続争いが起こってしまうこともあります。 起きてしまった相続争いを解決するにはどのような方法があるでしょうか。 この章では4つの解決方法をご紹介します。
解決方法(1)遺産を多く相続する人が代償金を支払う
特定の相続人が多くの遺産を相続したとき、その代償として他の相続人に現金を支払います。
この場合は、その旨を遺産分割協議書に書く必要があります。文例としては次のようなものが考えられます。
「相続人鈴木一郎は、被相続人の自宅の土地建物をすべて相続する代わりに、相続人鈴木二郎に500万円の現金を支払うこととする。」
なお、本来の相続分を超えて代償金を受け取った場合は、贈与税の課税対象になるため注意が必要です。
代償金を支払って行う遺産分割(代償分割)については、下記の記事を参照してください。
不動産などの分割しずらい相続財産は代償分割を利用するべき?代償分割を利用するための7つのポイント
解決方法(2)相続分を譲渡する
相続分の譲渡は、相続した遺産ではなく、自身の相続分を他の相続人に譲り渡す方法です。
相続分を譲渡して相続争いの場から離れることで、解決を図ることができます。相続分は有償で譲渡することもでき、トラブルを避けて財産を受け取ることが可能になります。
相続分の譲渡について詳しい内容は、下記の記事を参照してください。相続放棄との違いについても解説しています。
解決方法(3)遺留分を放棄する
遺留分は、被相続人の配偶者、子、親などが相続できる最低限の割合です。遺言書で特定の相続人に遺産をすべて相続させると書かれていても、他の相続人は遺留分にあたる遺産を受け取ることができます。
遺留分の放棄は、遺産を受け取る権利を放棄することでトラブルの解決を図る方法です。
相続争いが起こってから遺留分を放棄するときは、特に手続きは必要ありません。権利を主張しなければ放棄したことになります。(遺留分の放棄は生前にもできますが、家庭裁判所の許可が必要です。)
ただし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹が相続人になっているときは、この方法で解決を図ることはできません。
遺留分の放棄については、下記の記事で詳しく解説しています。
遺留分放棄は生前と相続発生後で方法が異なる!遺留分放棄を理解しよう
解決方法(4)弁護士に相談する
兄弟どうしで相続争いが解決しない場合は、相続問題を専門にしている弁護士に相談しましょう。
第三者の専門家を話し合いに加えることで、お互いが冷静になって解決に向かうことが期待できます。
7.まとめ
ここまで、相続争いで兄弟がもめる原因と、相続争いを避ける方法をご紹介しました。
相続争いは、遺産を公平に分割することができない場合に起こります。財産が多い裕福な家庭よりは、自宅以外に目立った財産がないような一般家庭の方がより深刻になりがちです。
兄弟どうしで相続するときは、間に入って仲を取り持つ親がいないことから、相続争いが泥沼化する危険性があります。夫が死亡して残された妻が義理の兄弟と相続する場合も、間に入る夫がいないため話し合いは難しくなります。
兄弟の相続争いを避けるには、生前に遺言書を書いて、資金が必要であれば生命保険で準備するといった対策が必要です。
生前の相続対策は、相続問題に詳しい弁護士や税理士のアドバイスを受けて行うことをおすすめします。
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