贈与税の基礎控除額と基礎控除を利用した節税対策
個人間で贈与をすると、贈与税がかかる可能性があります。
贈与税の基礎控除額は、原則として110万円です。
複数人から財産を贈与された場合はその総額が110万円を超えるかどうかで納税要否が判断されます。
また、もらった対象も特に問われませんので、親族から贈与された額も他人から贈与された額も全て含みます。
基礎控除額は従来60万円でしたが、平成13年度の税制改革によって110万円に引き上げられ、そのまま現在へ至ります。
贈与税の基礎控除額を利用した節税方法
贈与を利用して節税をする場合には、計画的に、長期にわたって贈与契約を行うという方法が考えられる方法です。
つまり、1年間で贈与額が110万円を超えないようにしながら推定相続人に贈与を行うことで自身の財産を減らし、将来の相続税の発生を食い止めるという方法です。
しかし、平成27年に相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられました(3,000万円+600万円×法定相続人の数)。そのため、少額の贈与により相続税の基礎控除以下まで財産を移転するという方法による相続税回避は難しくなっているということができます。
また、自身では贈与していたつもりであっても、贈与相手が贈与の事実を認識していなかった、通帳と印鑑が自身の手元にある等の事情により「名義預金」との疑いをもたれると、その金額が全て相続財産に加算されてしまう可能性があります。
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そのため、逆にあえて基礎控除である110万円を少し超えた金額を贈与し、贈与税申告と納税を行って「確かに贈与を行った」という証拠を残す方法を使うこともあります。
110万円を少し超えた程度だと贈与税額は数千円で済むので、贈与の事実をアピールしながら相続財産を減らすことができるのです。
贈与税と相続税のバランスを考慮した節税方法
上記の方法では、毎年110万円前後の贈与しか行えないため相続財産を減らすためには長期間が必要です。
しかし、計算は少し複雑になりますが、贈与する金額をうまく工夫することで贈与税の基礎控除にこだわらなくても、納める贈与税以上に相続税の額を圧縮することも可能です。
それは、贈与税と相続税が累進課税であることを利用した節税テクニックです。
累進課税とは、課税される金額が大きいほど税率が高くなるシステムのことです。相続財産の額がある程度大きければ、贈与の金額を工夫することで、税率の差を利用して贈与税の税率を相続税より低くできるのです。
例えば、20%の相続税率がかかる相続財産を、贈与税率15%に収まる額の贈与で減らせば、5%の節税効果が生まれるということです。
贈与の額は基礎控除付近まで抑えられれば税率の差が開いて良いですが、やはり年数がかかるので場合によっては一度に多めの額を贈与したいという場合もあるでしょう。
その場合は、上の税率に切り替わるギリギリの額を意識して行うことがおすすめです。
上の税率に切り替わるギリギリの額で贈与をし、相続財産の方を税率が切り替わるまで減らせれば節税効果が大きくなります。
相続時精算課税制度を利用して非課税枠を拡大する方法
贈与税については、ご子息への贈与である場合には、特別な制度が設けられています。
相続時精算課税制度と呼ばれる制度です。
この制度は、2,500万円までの贈与税の非課税枠を設け、この枠を超えた贈与があった場合には、20パーセントの課税がされるという制度です。ただし、相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、相続時に相続財産として計上されるため「相続時精算課税」という名がついています。
これは、社会的には、金銭の潤滑を円滑化するという目的(シルバー世代では生活のためお金を貯める方向になるので、非課税のメリットにより若年者へ贈与させて、金銭の流動をよくするという意図)がありますが、実質的には2,500万円までは非課税になるという利用者のメリットが大きい制度ということができます。
ただ、この2,500万円の枠を一度設定してしまうと、その額を撤回することなどはできなくなります。
また、この制度を精算時課税制度と呼ぶのに対して、通常の110万円までの基礎控除がある税制を暦年課税制度と呼びますが、一度精算時課税制度の適用を申告した場合に、暦年課税制度に戻すこともできなくなります。
贈与税の節税にはなりますが、相続時に持ち戻されることにより相続税の負担が大きくなる場合がありますのでその点は注意が必要です。
相続時精算課税制度とは何か?メリットやデメリットも全て解説!
ここでご紹介したいずれの方法を行うにしても、トータルで節税するのであれば綿密なシミュレーションが必要となります。不安な場合は相続税や贈与税に詳しい税理士に相談することをお勧めします。
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