非嫡出子(婚外子)でも相続できる?知っておきたい7つのポイント
結婚関係外の男女の間に生まれた子どものことを非嫡出子または婚外子と呼びます。
芸能人の非嫡出子は意外と多いものですし、一般社会でもお金持ちの人に愛人の子供がいるケースもあります。では、非嫡出子がいる場合、その子どもには、相続財産を取得する権利があるのでしょうか?法律で認められた夫婦間の子供(嫡出子)との相続分に違いはあるのでしょうか?
この記事の目次
1.嫡出子と非嫡出子の違いとは?

結婚していない男女の間に生まれた子どものことを非嫡出子と言うのに対し、嫡出子とは結婚している男女の間に生まれた子どものことを指します。
細かく分類するとこの嫡出子には推定される嫡出子と、推定されない嫡出子の2種類があります。
推定される嫡出子とは
下記のような場合に当てはまる子供は、婚姻関係にある男女との間の子供とみなされ、「推定される嫡出子」となります。
- ・妻が婚姻中に妊娠した子供
- ・婚姻届を提出した日から200日後まで、あるいは、離婚等した日より300日以内に生まれた子供

この点で話題になった芸能人カップルが、有名イケメンメジャーリーガーとレスリング女子元日本代表の2人です。
女性が前の夫と離婚した後300日以内に子供が生まれれば、前夫の子供となってしまうということで、大きな注目を集めました。
推定されない嫡出子とは

いわゆる「できちゃった結婚」(女性が再婚の場合)で、婚姻届を提出した日から200日以内に生まれた子供は、推定されない嫡出子扱いになります。
この場合、生まれた子供は結婚している男女の間に生まれた嫡出子ではありますが、夫の子供であるとの推定をされないことになります。
なぜなら、前の夫との間に生まれた子供である可能性があるからです。この推定されない嫡出子は相続時になにかの争いがあった場合危うい立場となってしまいます。親子の関係がないことを法的に確認することの訴えや審判によって、親子関係がないとみなされてしまうことがあるからです。
2.非嫡出子も相続できる?
嫡出子は配偶者と同様に相続する権利が保証されています。しかし、非嫡出子の場合は相続する権利がある場合とそうでない場合の2パターンに分かれます。非嫡出子が認知されている場合には相続する権利があります。しかし、認知なしの非嫡出子には相続する権利がありません。
3.認知とは具体的にどうすること?
認知とは確かに自分の子どもであると男性が認めることです。
女性は自分で子どもを産みますから、自分の子かどうか迷うことはありませんね。
しかし、男性の場合には、自分の子でない可能性があるため認知することが必要になるのです。また、結婚していない女性が子どもを産んだ場合、男性が認知することによって子どもの戸籍に父親の名前が記載されます。
認知されないと父が誰か推定できないため、空欄になってしまい、戸籍上父親がいないということになります。
一例で考えてみましょう。
相続一郎と愛人である税制花子の間に非嫡出子の子どもができたとします。
税制太郎と名付けられたその子を父親が認知しない場合、父の欄には記載なし、母は相続花子、続柄は長男となります。
一方、父が認知した場合、父は相続一郎、母は税制花子、続柄は長男となります。

ところで、この戸籍の表記について、嫡出子については、その実父母間における出生の順序に従い、「長男、長女」「次男、次女」「三男、三女」と男女の性別ごとに数えていきます。
続柄は、実父母ごとに数えるので、父と先妻の間に長男がいて、その後その父と後妻の間に男子が出生した場合も、その男子の続柄は長男となります。
一方、嫡出子でない場合は、「男」「女」と記載されることから、嫡出子・非嫡出子の判断が可能です。
※ただし、平成16年11月の戸籍法施行規則の改正により、嫡出子・非嫡出子のこのような区別は廃止され、以降に出生した子の続柄柵はすべて、「長男・長女」「次男・次女」と統一されています。
なお、平成16年11月より前に出生した非嫡出子でも、更正の申し出により記載の変更は可能です。
4.認知に必要なこととは?
認知届を子どもの本籍地か住所地の市役所に提出することにより認知が行われます。
認知届を提出する際には、届出人の印鑑と身分証明書を併せて用意する必要があります。本籍地に提出する場合は、さらに父・子両者の戸籍謄本も必要となります。
認知をする父親が未成年の場合でも、親の同意を受けずに届出をすることが可能です。未成年の場合には親の同意が必要になる結婚と違い、認知には親の同意は不要です。ただし、子供を産んだ母親本人の同意は必要となります。
認知届の記載は簡単にできますが、不明な点は市役所の方に聞くと良いでしょう。
5.認知方法には3つのパターンがある
認知方法には任意認知、裁判認知、遺言認知の3つのパターンがあります。
1つめの任意認知は最も一般的なもので、父親が子どもを自分の子供であると認めて認知をすることです。
2つめの裁判認知は裁判を行って父親が誰かを決定することで、父親側に認知を行わせることを目的としています。個人で行うことは難しく、弁護士が必要になります。
3つめの遺言認知は遺言で認知をすることで、遺言執行者が10日以内に届出をすることになっています。これは生前に本妻と争うのを避けるために死後に遺言で認知するための方法で、死後認知とも呼ばれます。
6.認知されれば非嫡出子でも相続人になれるのか?
相続人の決め方を確認しておきましょう。

まず、亡くなった人の配偶者は常に相続人となります。夫が亡くなった場合には妻が、妻が亡くなった場合には夫が必ず相続人となります。続いて、配偶者以外の相続人には順位があります。
第1順位となるのは死亡した人の子どもで、この中には認知された非嫡出子も含まれます。その子どもが既に死亡しているときは、その子どもの直系の子供や孫が相続人となります。子どもも孫もいる場合は、死亡した人により近い世代が優先されます。
第2順位となるのは、死亡した人の直系尊属である父母や祖父母などです。第3順位は亡くなった人の兄弟姉妹ですが、既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。 第1順位の人がいない場合、第2順位の人が、第2順位の人がいない場合は第3順位の人が相続人となります。
相続人について、詳しく確認しておきたい方は、下記サイトをご確認ください。 |
7.非嫡出子の相続分はどのくらいある?

相続人それぞれの相続分は法律で定められています。相続人が配偶者のみで第1~3順位まで誰もいない場合には、配偶者がすべて取得します。
配偶者以外に第1順位である子どもか孫がいる場合、配偶者が2分の1、第1順位の人が2分の1を得ることとなります。
配偶者がいない場合には第1順位の人がすべて取得します。つまり、相続人が配偶者と認知された非嫡出子だけであれば、2分の1が非嫡出子の相続分となります。
ほかのケースとして、配偶者と第2順位の人がいる場合には、配偶者が3分の2、第2順位の人が3分の1となります。配偶者がいない場合は、第2順位の人がすべて取得することになります。配偶者と第3順位である兄弟姉妹がいる場合には配偶者が4分の3、第3順位(兄弟姉妹)の方が4分の1です。
相続分についての詳細は、下記サイトでご確認を! |
平成25年の9月4日まで(民法改正前まで)は、非嫡出子が相続できる額は嫡出子の2分の1でした。しかし、最高裁判決により嫡出子と非嫡出子で法定相続分に差を設けることは違憲であるとの判決が下され、それ以降に発生した相続においては嫡出子と非嫡出子の相続する額は、認知がなされている限り完全に同一となっています。
実際にどのように変更されたかという例は、下記の図でご確認ください。
8.まとめ
愛人との間に生まれたなどの理由で非嫡出子である場合、相続することが出来ないと考えている人も多いことでしょう。しかし、実際には認知さえしてもらえれば相続は可能です。認知するかどうかで状況が大きく変わってしまうのできちんと知識を身につけておくのは大切ですね。
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