タンス預金はしたほうが良い?マイナンバーが預金に与える影響とは?

マイナンバー制度が導入されると、今まで以上にタンス預金が増加するのではないかと考えられています。いったいなぜタンス預金が必要と考えられているのでしょうか?
タンス預金をすることのメリットとデメリットを考えてみましょう。
動画でも分かりやすく解説しています!
この記事の目次
1.タンス預金の意味を知ろう

多くの人が銀行や郵便局に口座を作り、お金を預けています。
一方、タンス預金とは金融機関にお金を預けるのではなく、自宅で保管することを差します。金融機関にお金を預けていても、自宅で保管しているお金があればそれはタンス預金です。
日本ではどれくらいの額がタンス預金として自宅で保管されているか知っていますか。正確な金額は把握できないと言われていますが、およそ30兆円から80兆円がタンス預金されていると言われています。
政府は、国民がタンス預金のお金を使うためにいくつかの対策を打ち出しています。

そのうちの代表的な対策が「結婚・子育ての一括贈与」や「教育資金の一括贈与」という制度です。
この制度の詳細は、下記サイトをご参照ください。 結婚・子育て資金の贈与が1,000万円まで非課税に?平成27年4月からの新制度をご紹介 |
この2つの制度を簡単にご説明すると、
結婚・子育ての一括贈与とは結婚・子育てのための贈与なら1,000万円までは無税にするという法律で、
教育資金の一括贈与とは教育のための贈与なら1,500万円までは無税にするという法律です。
タンス預金をしている人は高齢者が多く、高齢者のタンス預金を若い世代にわたるように考えられた制度がこの2つの法律です。
この制度を利用し、高齢者から若い世代へお金が贈与されることでタンス預金の額が減少します。
しかし、これだけでは不十分で、さらに多くの対策が必要だと言われています。
2.節税対策にタンス預金は使えるのか
まだ決定はしていませんが、2021年に預貯金のマイナンバー登録が義務化される可能性が高いと言われています。
マイナンバー改正法により、個人の銀行口座とマイナンバーを結び付け、政府が国民の預金保有額を把握することを目的としているためです。遠からず、私たちの預金額が国によって簡単に調べられてしまう時代が来ることが予想されます。
それなら口座に預金せずタンス預金をしたほうがよいと考える人も出てくるでしょう。
タンス預金は相続税の課税対象項目となるため、本来は相続税の計算をするうえで考慮しなくてはいけません。しかし、タンス預金があることを税務署が把握できなかった場合、相続財産が減少するため相続税対策ができると考えられますが、税務署にタンス預金の存在を知られないでいるということが本当に可能なのでしょうか。
3.税務署はタンス預金を把握できるのだろうか
税務署に相続税の申告書を提出すると、税務署はその内容が正しいかのチェックを行います。
(1)税務署はここをチェックする

税務署は銀行や証券会社へ照会をかけ、残高証明や口座の出入金をチェックして金融資産を調べます。このとき、被相続人(相続財産を残して他界した人)の口座だけでなく、家族の口座もチェックされます。
(2)口座の出金情報からタンス預金が特定される場合がある

口座から100万円以上の出金があるにもかかわらず出金したお金が使途不明である場合、タンス預金が疑われます。
税務署は出金情報から実地調査が必要であると判断すると、家宅捜索を行います。タンス預金をしていても自宅を調査されタンス預金の存在が明るみに出るケースが多いようです。
知人友人に預ければ見つからない可能性もありますが、タンス預金で節税をしようと考える人の額は数千万単位となるため、誰かに預かってもらうのは現実的ではありません。出金したお金をタンス預金にした場合、税務署に突き止められてしまう可能性がとても高く、隠し通すのは困難であるといえます。
(3)海外送金なら隠し通せるか

出金したお金を手元に置かず、海外へ送金すれば分からないのではないかと考える人もいるようです。しかし、100万円を超える額を海外へ送金したり、海外から日本へ送金されてきたりした場合、銀行は税務署へ送金の調書を提出します。そのため、多額の海外送金を行うと税務署に知られてしまいます。
(4)5,000万円を超える海外資産は報告しなくてはいけない

平成25年より、5,000万円を超える海外資産を保有する場合は国外財産調書の提出が必要になりました。たとえ資産を海外に移しても税務署にどれくらいの資産があるのかという点は把握されています。
4.税務調査がくるタイミング

一般的に税務調査は申告書を提出したあと1~2年後に行われます。税務調査が入る可能性は2割程度ですが、納税額が大きいと税務調査が入る可能性が高くなります。
税務調査が入った場合、約8割の人が何らかの指摘を受けています。税務署が調査に来て指摘を受けると、追加で納税することとなります。もし税務調査が入った際、自分だけで対応しようとすると税務署職員の言いなりになりやすく、想像以上に多額の相続税を追徴課税されたという人がたくさんいます。
税務署職員に良いように扱われないために、税務調査が行われる際は相続税専門の税理士に立ち合いを頼むと安心です。それでは税務調査が行われたときに、どのようなことを質問されるのかもチェックしましょう。
5.調査官が税務調査でよくする質問
税務調査で多い質問はどのような内容で、何を目的として質問されるのでしょうか。まずはよくある質問の内容を見てみましょう。
(1)被相続人について聞かれる質問
・入院先や入院期間、死亡原因
・医療費の支払い方法
・被相続人の出生地
・被相続人の趣味や勤務先、退職時の役職
・持ち家があるかどうか。あった場合、その家の詳細について
・過去に相続した財産の有無。あった場合、なにを相続したか
・過去に贈与した経験の有無。あった場合、誰に贈与したか
(2)妻について聞かれる質問
・収入額
・過去に相続した財産の有無。あった場合、なにを相続したか
・過去に贈与した経験の有無
・住まいや生活費について
・貸金庫の有無。会った場合、その場所
(3)子について聞かれる質問
・収入額
・学生なら学費について
・一緒に暮らしているか、離れて暮らしているか
・過去に相続した財産の有無。あった場合、なにを相続したか
6.税務調査官は質問をすることで何を調べているのか
税務調査官は上記での質問を通し、以下の内容を調べています。税務調査官が何を知るために質問されているかを把握しておきましょう。
・収入と生活費の額を調査し、申告した額と相違ないかをチェック
・配偶者と子供の預金が、実態は被相続人の財産になっていないかどうかのチェック
・預金名義のチェック
・貸金庫をタンス預金として使っていないかのチェック
・ゴルフ会員権があるかどうかのチェック

7.タンス預金をすることでどんなメリットがあるか
(1)銀行が倒産しても安心
日本では銀行が倒産したときに1,000万円までは保証されますが、それ以上の額は保証されません。1,000万円以上の預金がある人は保証額以外が消えてしまう可能性があります。
しかし、タンス預金なら銀行が倒産したときに自分が被るリスクを回避できます。
(2)好きなタイミングでお金を使える
銀行の口座は死亡届を出すと口座凍結され、お金を下ろすことができなくなります。しかしタンス預金なら凍結される心配がありません。
また、銀行で営業時間外にお金を下ろそうとすると、ATMが閉まっていて使えない場合があります。土日祝日や夜間は引き出しに手数料が発生します。タンス預金なら時間や手数料を気にせずに使うことが可能です。ギリシャでは金融危機の際、現金の引き出しが1日8,000円に制限されたことがありました。しかしタンス預金は制限を受けず、必要な額を取り出すことができます。
(3)タンス預金なら贈与税がかからない
タンス預金のお金を誰かに渡しても記録が残らず、贈与した証拠が発生しません。そのため、贈与税は課せられないでしょう。
しかし、贈与された人が銀行に入金すると受け取ったという証拠になるため、後日贈与税が発生する可能性があります。
(4)タンス預金には課税されない
キプロスという国では2013年3月16日に預金が封鎖され、10万ユーロ以上の預金額には9.9%、それ以下の預金額には6.75%が課税されました。たとえば10万ユーロは当時の日本円で1,100万円です。2,000万円の預金が合った場合約200万円が自動的に口座から消えたそうです。日本で同じ状況が発生することは考えにくいのですが、可能性はゼロではありません。日本が財政破綻してIMFの管理下に置かれた場合、最悪で預金の30%から40%をカットするという項目があるそうです。
万が一の事態が起きたとき、銀行に預けているお金から税金が引かれ少ない額しか残らなかったということになる可能性があります。しかし、タンス預金なら自動的に税金を引かれる心配はありません。
(5)政府に財産を把握させない
マイナンバー制度が開始され、銀行口座の残高まで把握された場合、銀行に預金があれば政府は個人の資産保有額を簡単に把握することが可能になります。
しかし、タンス預金はマイナンバーに紐づけされないので、政府に財産の額を知られることはないと言えます。
8.タンス預金をすることでどんなデメリットがあるか
(1)預金に利息がつかない
銀行に預けてある預金には、わずかですが利息が発生します。
しかし、タンス預金は利息がつかない点がデメリットだといえます。
ただ、定期預金で預けても現在の利息は非常に低いため、それほど大きなデメリットとはいえないでしょう。
(2)インフレが起きると価値が下がる
もしインフレが起きた場合、紙幣の価値が目減りします。
アベノミクスでは毎年2%のインフレを予定されていますが、仮に予定通りにインフレになった場合、タンス預金はしだいに価値が減少する可能性があります。
(3)災害や盗難の心配
災害や盗難の被害にあうとタンス預金は消えて無くなります。リスク回避のためには災害でも壊れない頑丈な金庫、そして盗もうとしても運び出せないような重量の金庫を用意する必要があります。簡単に壊れず運び出せない金庫を用意することで、タンス預金が被害にあう可能性を低くすることができます。
(4)どこにタンス預金したか失念する
定期的にチェックしている場合は忘れにくくなりますが、長い時間が経過するとタンス預金を置いた場所を忘れてしまうということも考えられます。タンス預金を見つけられず、万が一、破棄してしまった場合はタンス預金がまるごと消えてしまいます。
(5)税務署にタンス預金の申告をしなかったことが分かると罰則
相続税の申告にタンス預金を入れなかった場合、見つからずに過ごせれば節税になります。しかし、税務署に分かってしまうと罰則の税金の支払いをしなければなりません。罰則は適正課税より大きな金額の支払いが必要です。タンス預金の申告をしないと、本来なら払わなくても済んだ金額を支払わなければならず、大きなデメリットとなります。
9.タンス預金のおすすめの方法
タンス預金はいきなり大きな額を預金するのではなく、銀行口座を通さずに少しずつお金を溜めていくと税務署が把握することは困難になります。しかし、タンス預金は相続財産であるため、相続の書類作成時は忘れずにタンス預金も項目に加えて申告することをおすすめします。
10.どこにタンス預金をするか
屋根裏
物置、ベランダ、庭の倉庫
押入れやタンス
本棚
冷蔵庫など台所
仏壇
引き出し
ベッド下
このような場所にタンス預金をする人が多いようです。もしタンス預金をするなら他の人が思いつかない場所のほうが良いため、上記にあげた場所以外で隠しましょう。
11.タンス預金とマイナンバー
タンス預金は税務署に存在を隠し通すことができれば相続対策になります。しかし、存在が明らかになった場合、多額の罰則の税金の支払いが発生するため相続税の申告に計上することをおすすめします。
タンス預金は相続税対策よりも、銀行口座の凍結対策や預金に課税されるリスクヘッジとして考えると安心できます。
どのようなときに銀行口座が凍結するかは、下記サイトでご確認ください。 |
また、将来マイナンバー制度によって国に預金額を把握される時代が来ることが予想されます。
そのときに、タンス預金があると上手く活用できるかもしれません。
タンス預金には災害や盗難の被害にあう恐れがあり、リスクヘッジのためにも頑丈な金庫を用意しておくと良いでしょう。
タンス預金に関連する記事を参照しておきますので、気になる方はぜひご覧ください。 |
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