外国籍の相続人の相続権と申告手続きについて
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相続人が外国籍である場合の相続権
配偶者など相続人の中に外国籍の方がいる場合、相続権はどのようになるのか、遺産を相続できるのか気になるところです。
このケースのように外国と何らかの関わりを持つ相続のことを渉外相続といいます。
この渉外相続については各国ごとに考え方が異なり、全ての財産を被相続人の本国法で決めるという相続統一主義と、遺産の種類により拠り所とする国の法律が異なる相続分割主義という2つの考え方があります。
日本においては、相続統一主義の考え方を採用しており、「相続は、被相続人の本国法による(法の適用に関する通則法第36条)」と定められています。
つまり、被相続人が日本国籍であれば、日本の法律に従って相続が行われます。
この日本の法律に従った場合、相続人の国籍は一切関係なく、外国籍の相続人には、日本国籍の相続人と同じ相続人としての権利や義務が発生します。
また、なかには、結婚後も配偶者在留資格が取れずに短期ビザの更新を繰り返している場合もありますが、配偶者在留資格の有無、ビザの種類、婚姻の期間や同居の期間も、相続権の有無については関係なく、日本の法律に従って相続が行われることとなります。
なお、遺言についても、日本では「遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による(法の適用に関する通則法第37条)」と規定されています。
そのため、日本国籍の遺言者の場合は、相続人の国籍に関わらず、日本の法律に従って遺言を作成することとなります。
外国籍の相続人がいる場合の相続登記
相続登記についても、日本国籍の相続人の場合と同様です。
相続する権利を証明する書類としては、その関係が記載されている被相続人の戸籍謄本または除籍謄本を添付します。
住所を証明する書類としては、平成24年7月9日からは登録原票記載事項証明書に代わって住民票の写しを添付します。
住民票の写しは、以前は発行ができなかったため、登録原票記載事項証明書を添付していました。
平成24年7月9日から外国人登録制度が廃止となり、中長期在留者や特別永住者等については住民基本台帳に記載され、住民票の写しの交付が可能となっています。
ただし、当該住民票の写しには、2012年7月8日以前の居住歴、父母や配偶者の氏名、氏名・国籍の変更履歴、上陸許可年月日等は記載がされていないため注意が必要です。
外国人登録原票に記載された過去の登録事項について証明が必要なときは、「外国人登録原票の写し」を法務省に直接請求する必要があり、この場合には取得までに長期間必要となります。
被相続人が外国籍の場合の相続税申告の手続き
相続税の申告を行う際には相続人を確定する必要があります。
日本の場合には戸籍制度があり、戸籍を辿ることで相続人の確定作業を行うことができます。
ただ、戸籍制度のある国は多くありません。戸籍制度があるのは、韓国・台湾・日本くらいです。
戸籍制度の無い国でも出生・婚姻・死亡については管理をしているところは多いようですが、相続人の特定はできません。
そのため、公証人の認証を受けた宣誓供述書を作成することや、戸籍に変わるものとしてそれぞれの国が発行する証明書をもって相続人を特定します。
相続人の範囲や相続分は国によって異なる
また、相続人の範囲や相続分は各国の相続法で異なった定めをしていることがあります。
例えば、被相続人に子供も親もいない場合、日本の民法では配偶者と兄弟姉妹が相続人になるのに対し、韓国の民法では配偶者のみが相続人となります。
どの国の相続法の適用を受けるかについては、法の適用に関する通則法第36条に『相続は、被相続人の本国法による』と定められています。
したがって、外国籍の被相続人が日本で死亡した場合でも、相続に関してはその“外国”の法律に従うことになります。
ただし、その外国の法律が「準拠法は被相続人の居住地にする」と規定したり、被相続人が遺言により準拠法を指定したりする場合には、取り扱いが異なることがありますので注意が必要です。
相続税の課税対象になるかどうかは相続人の住所次第
相続税の計算において、どのような財産が課税されるかどうかは、基本的には相続人の住所地により決まります。
相続人が日本に住所を有している場合には、相続人の国籍にかかわらず、相続により取得した全ての財産に相続税が課税されることになります。
相続人が日本に住所を有していない場合には、日本国籍の有無であったり、住所を有していない期間の長短で、日本にある財産のみに相続税が課税されることもありますが、このような仕組みを使った課税回避行為があったため、たびたび法改正が行われ、課税される財産の範囲が変わってきています。
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