相続手続きの代行は誰に依頼?相談先ごとの違い、費用相場を解説

相続に必要な手続きを代行してもらう場合、誰に依頼すればよいのでしょうか?ベストな依頼先は、代行を依頼したい手続きや相続内容の詳細によって異なります。代表的な依頼先と、それぞれに依頼できる内容について確認していきましょう。
1.大変な相続手続きを依頼するメリット

相続に関する手続きはどれも自力でできますが、中には複雑で難しいものもあります。そのような手続きを進める際、代行を依頼するとどのようなメリットを得られるのでしょうか?
1-1.書類収集の手間やストレスを節約できる
手続きにはたくさんの書類が必要です。役所・金融機関・法務局など提出先ごとに記入しなければいけない書類もあります。中には相続人全員の署名捺印が必要なものもあり、必要事項を埋めるだけでも手間がかかるものです。
必要書類の不足や記載事項の不備があれば、書類をそろえることからやり直さなければいけません。繰り返し同じ場所へ行く必要もあるでしょう。
このような手間やストレスを回避するのに役立つのが代行です。パッケージプランであれば、一定の料金で手続きを丸ごと依頼できます。
必要な手続きを把握しており複雑なものだけ依頼するには、個別プランが便利です。
1-2.ミスの不安なく手続きを進められる
さまざまな書類を集め各機関で手続きを進めなければいけない相続の中には、期限が決まっているものもあります。見落としていると不利益が生じるケースもあるでしょう。
手続きを代行してもらえば、ミスの心配なく手続きできます。例えば自力では被相続人の財産を見逃してしまうかもしれません。財産の調査も知識や経験が豊富な代行へ依頼すれば、全て洗い出し漏れなく手続き可能です。
また相続税の手続きでは、知識の有無によって評価額に大きな差が出る場合もあります。相続税の計算は単純なものではありません。申告まで10カ月の期限もあるため、実績豊富な税理士へ依頼するのがよいでしょう。
2.行政書士

書類作成代行といった業務を行う行政書士には、どのような手続きを依頼できるのでしょうか?対応している手続きとともに費用の相場について紹介します。
2-1.遺産分割協議書作成等の代行に対応
『遺産分割協議書』の作成を依頼したいと考えているのであれば、行政書士に依頼するとよいでしょう。作成が必須の書類というわけではありませんが、預金の相続など遺産分割協議書が必要な手続きもあります。
また口頭のみではトラブルに発展する可能性もあるでしょう。もめ事を回避するためにも、作っておくと安心です。
決まった様式が定められていない遺産分割協議書は、自力でも作成できます。ただし書き方に誤りがあると、その他の手続きに支障をきたすケースもあるため、行政書士へ依頼するのがおすすめです。
ただし行政書士ではトラブルへの対応はできません。相続争いが発生しているケースには不向きです。
2-2.書類作成や手続きにかかる費用の相場
書類作成や手続きを行政書士へ依頼すると費用がかかります。代表的な業務に対する費用の相場は下記の通りです。
- 遺産分割協議書の作成:3万円~
- 相続人へ協力を求める連絡文書の作成:2万円~
- 相続人の署名捺印取得代行:1人につき1万円~
全ての書類作成を依頼するには、パッケージプランを利用するとよいでしょう。相続関係説明図の作成や戸籍などの取得費用も含め、20~30万円ほどが目安です。
ただし遺産総額や手続きの複雑さによっては、個別に見積もりを実施するケースもあります。まずはどのようなプランがあるか行政書士へ質問し、代行を依頼したい範囲に合わせて利用しましょう。
3.司法書士

司法書士は書類作成に加え登記業務もできます。相続手続きではどのような代行を依頼できるのでしょうか?
3-1.各種書類作成に加え相続登記の代行が可能
相続手続きで司法書士に任せる代表的なものが『登記』です。例えば不動産を引き継ぐときには所有権移転登記を行います。実施の義務はありませんが、相続と同時に行うことでトラブル防止につながるでしょう。
不動産の登記は書類の作成が複雑です。自力で書類作成しようとしてもうまくできず、後から問題が発覚することもあるでしょう。高い価値を持つ財産だからこそ、司法書士に依頼すると安心です。
加えて、遺言書の検認手続き申立てに必要な書類・遺産分割協議書・相続放棄の申述に必要な書類の作成なども依頼できます。
3-2.相続登記にかかる費用の相場
不動産の相続にまつわる登記を依頼するときの費用は10~15万円程度が相場です。ただし不動産の固定資産税評価額や筆数・相続人の人数などによっては、相場より高くなるケースもあります。
例えば1,000~3,000万円程度の一般的な住宅を相続するのであれば、10万円弱で依頼できるでしょう。5,000万円を超える不動産では10万円以上、1億円を超えると12万円以上の報酬が必要です。
また紹介した費用相場は、登録免許税・司法書士手数料・必要書類の取得費用・遺産分割協議書の作成などの費用を含みます。
4.弁護士

相続について幅広くサポートしてほしいと考えているなら、弁護士へ依頼するとよいでしょう。あらゆる手続きを代行してもらえます。
4-1.代理権により幅広くサポートしてくれる
弁護士は代理権を持つため、相続に関する手続きのほぼ全てに対応可能です。例えば下記の業務を代行してもらえます。単に書類を作成するだけでなく、相続人の代理人として家庭裁判所へ申請できるのが特徴です。
- 遺言書の無効確認
- 相続財産・相続人の調査
- 遺言書の検認
- 相続放棄・限定承認の申述
- 遺留分減殺請求の代理
- 遺産分割協議
また弁護士の本分は争いの解決ともいえます。相続について意見が割れる可能性があるなら、はじめから弁護士に依頼しておくとスムーズに進みやすいかもしれません。
家庭裁判所の遺産分割事件数を見ても、弁護士が関与しているケースがほとんどです。
参考:司法統計 年報 家事 令和元年度「遺産分割事件数―終局区分別代理人弁護士の関与の有無別―全家庭裁判所」|最高裁判所
4-2.弁護士費用の相場
弁護士に手続きを依頼すると、相談料や着手金を請求されるケースも多いでしょう。昨今は相談料・着手金を無料とする弁護士もいますが、必要なケースもあるため確認しておくと安心です。
これらの費用に加え、遺産分割協議書作成・相続放棄・限定承認など手続きごとに手数料が発生します。また『回収金額の〇%』で計算される報酬金も必要な費用です。
争いがなければ着手金は1~3%、報酬金は2~5%程度が目安といえます。争いが発生しているようであれば、より高額な費用が必要です。このほかに裁判所への出廷や出張が発生すると日当も支払います。
5.税理士

相続する財産が一定以上の金額になると、相続税の申告と納税が必要です。そのような場合には税理士へ相談するとスムーズに手続きできます。
5-1.相続税申告の代行が可能
税理士に代行を依頼できるのは相続税の申告です。相続財産が預金のみであれば比較的シンプルで計算もしやすいでしょう。しかし不動産といった評価の難しい財産があると、自力での申告は難しいかもしれません。
例えば不動産の相続では評価額を80%減額できる『小規模宅地等の特例』を適用できるケースがあります。しかし減額率が大きい制度だからこそ、要件が厳しく定められており複雑です。
特例が適用されるかどうかは素人では判断が困難なためには、税理士へ適用の可否について相談しましょう。また仕事やさまざまな事情で期限内に申告できないケースも、税理士へ相談するのが向いています。
5-1-1.相続税はどんなときに発生するの?
財産を引き継いだとしても、必ず相続税が発生するわけではありません。2019年に相続税が発生したのは全体の6.8%です。自分が課税対象となるか確認するには、課税遺産総額を計算します。
まず『遺産総額-(非課税財産+葬式費用+債務)』を計算し、ここへ相続開始前3年以内の贈与額をプラスします。この金額から『3,000万円+600万円×法定相続人の数』で求めた基礎控除を引いたのが課税遺産総額です。
計算した課税遺産総額がプラスになっていれば、その金額に相続税が課されます。
5-2.相続税申告代行にかかる費用の相場
税理士に相続税申告の代行を依頼すると、遺産総額に基づいて報酬が算出されます。遺産が多ければその分、費用も大きくなるわけです。
一例として『税理士法人チェスター』が提供する『相続税申告プラン』の場合、遺産総額が5,000万円以下のケースの報酬額は27万5,000円です。報酬は遺産総額によって細かく分けられているため、必要以上に多く払いすぎる心配はありません。
相続税の申告はもちろん、遺産分割協議書や財産評価、財産目録の作成も任せられます。節税につながる遺産分割案を提案してもらえるのも特徴です。
また、上記を基本報酬として、土地は1利用区分ごとに6万6,000円、非上場株式は1社につき16万5,000円が加算されます。
6.代行の依頼先を見つけるには?

大切な財産の手続きを任せるには、信頼できる依頼先でなければいけません。安心して代行を任せられる依頼先の探し方を見ていきましょう。
6-1.銀行や別の専門家からの紹介を受ける
既に銀行や何らかの専門家へ相続について相談しているなら、提携している専門家を紹介してもらうとよいでしょう。遺産総額が多く多岐にわたる場合、複数の専門家を紹介してもらう必要があるかもしれません。
紹介を受けて依頼先を見つけられれば、自分で探す手間を省けます。ほかの手続きで忙しい場合にも便利です。
6-2.自分で信頼できる相談先を選ぶ
相談先を自分で探す場合には、相続に関する十分な知識を持っていることが欠かせません。例えば税理士へ相続税の申告について相談する際には、相続税に詳しい税理士を選びたいところです。
経験豊富な税理士であっても、専門分野が法人税や所得税では相続税の手続きに十分対応できません。余分に税金を納める事態や、過少申告により加算税を支払う結果になる可能性もあります。弁護士や行政書士へ依頼する場合も同様です。
また料金が分かりやすく良心的かどうかもチェックしましょう。分かりにくい料金体系や追加料金がかかる仕組みでは、相場以上に費用が膨らむ可能性があります。十分な規模があるかも、信頼できる相談先を選ぶポイントです。
7.サポートにより安心して手続きを進められる

相続の手続きは複雑な部分も多く、自力では難しいと感じることもあるでしょう。適切に手続きをするには専門家のサポートを受けると安心です。
遺産分割協議書の作成なら行政書士、所有権移転登記なら司法書士、争いの発生が予想されるなら弁護士、相続税について相談するなら税理士がそれぞれ向いています。中でも相続の分野に精通している専門家が適切です。
相続税についての相談なら『税理士法人チェスター』へ問い合わせるのもよいでしょう。専門家に相談しながら進めることで、ミスなくスムーズに手続きできるはずです。
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