おひとりさま終活には何が必要?事前の手続きで老後不安を解消しよう

おひとりさまの終活では、どのようなポイントを押さえて準備を進めるとよいのでしょうか?終活ノートの書き方や身の回りの整理はもちろん、老後の暮らしや死後の手続きを任せられる仕組みについても見ていきましょう。
この記事の目次
1.思い立ったらおひとりさま終活

単身世帯でこの先が心配と考えているなら、終活を始めるとよいでしょう。具体的な終活の始め方について知ることで、今後の不安軽減につながりやすくなります。
1-1.誰もがおひとりさまになる可能性がある
かつては当たり前だった親・子・孫の3世代で暮らす世帯は減少しています。ライフスタイルや仕事環境の変化により、夫婦や親子のみで構成される核家族が増えているのです。
加えて未婚率も上がっています。高齢者の意識や価値観も変化しており、たとえ子どもがいても同居せずに暮らしたいと考える人が増加中です。
総務省の調査によると、2040年には単独世帯の割合は『約40%』に達すると予測されています。中でも65歳以上の単独世帯が急激に増えると予想されているのです。
現時点で配偶者がいる人も、死別や離婚によりいつおひとりさまになるか分かりません。頼れる家族がいないおひとりさまになる可能性は誰にでもあるのです。
1-2.終活でおひとりさまになっても安心
東京都監察医務院が公表しているデータによると、18年に東京23区内で一人暮らしをしている65歳以上の人の中で、誰にもみとられずに自宅で亡くなったのは3882人でした。おひとりさまであれば誰にでも起こり得ることでしょう。
おひとりさまが原因不明の突然死を迎えると、遺品や住宅の処分方法などの問題が発生します。遺体の引き取り先が分からないといった事態も起こりかねません。
このような問題を未然に防ぐために、終活が役立ちます。大切な情報を整理し、いざというときに備えておくことで、安心して最期のときを迎えられるでしょう。
1-3.終活ノートを書き始めてみよう
終活を始めるなら、まずは『終活ノート』を書き始めるとよいでしょう。人生の終わりに向けまとめておくと、さまざまな手続きがスムーズに進みやすくなります。最低限記載しておきたい情報は下記のとおりです。
- 本籍地
- 生年月日
- 健康保険証
- 年金手帳
- 保険証券
- パスポート
- 家族の氏名や連絡先
- 家系図
- 死亡時の連絡先
- 預貯金や不動産など資産について
- 葬儀やお墓について
近年はパソコンやスマホなどのデジタル遺品も増えています。必要に応じてログイン情報や、登録しているサービス・SNSの情報なども記載しておくと処理がスムーズです。
同時に、この先どのように生きていくかについてのプランも考えます。やりたいことリストに落とし込むと、前向きな人生に役立てやすいでしょう。
2.暮らしを整えて充実した生活を送る

今の暮らしを見直し、より充実したものにすることも終活につながります。具体的にどのような点に取り組むとよいか確認しましょう。
2-1.身の回りの整理をして気持ちに余裕を
自分の持ち物を見直すと、部屋がすっきり整うのはもちろん、気持ちの余裕にもつながります。長年暮らしている中で所有物が増えているなら、まずは不要品を処分します。
洋服や靴はよく着用するものだけを残し、流行遅れのものやサイズが合わないものは処分しましょう。本やCDも、もう読まない・聞かないものは処分の対象です。
持ち物が減れば、どこに何が収納してあるかすぐに把握しやすくなります。使いたいときにすぐに見つけられ、日常的なストレス軽減に役立つはずです。十分なスペースを確保することで、転倒などの予防にもつながります。
またさまざまな品物を手放す行為により、心の整理がしやすくなる点もポイントです。自分にとって本当に必要なものにも気付きやすくなります。
2-2.お互いに頼り合える友人を作る
信頼できる友人が身近にいることも大切です。困ったときに頼り合える相手がいれば、いざというときにも安心できます。また同じ趣味を持つ友人であれば、充実した時間を過ごせるでしょう。
身近に友人がいないなら、仕事場で作るのも一つの方法です。休憩時間の雑談をきっかけに、意気投合できる友人と出会えるかもしれません。同じ年代のシニアが活躍する職場への再就職により、生活にハリも生まれます。
3.老後の生活を考える

心身ともに十分元気なときから老後の生活について考えることも大切です。具体的に検討しておくことで、用意すべき資金や手配しておくべきことがはっきりします。
3-1.住む場所のこと
若いときには問題なく暮らせても、年齢を重ねると足腰が弱り暮らしにくくなる家があります。例えば2階建ての住宅やエレベーターのないマンション・段差の多い家では、家の中を行き来するだけでも一苦労です。
日常の買い物をするのに車が必須の地域だと、高齢になり運転ができなくなると生活が立ち行かなくなります。病院に近い場所へ移り住みたいと考える人もいるでしょう。
高齢になり実際に不便さを感じてから住み替えるのは難しいものです。物件の下見や引っ越しには体力が必要ですし、おひとりさまでは入居を拒まれるケースもあります。
体力があり行動できるうちに住む場所を見直すことが大切です。
3-2.入院が必要になったときのこと
高齢になると病気やケガのリスクが高まります。元気なうちは自宅で療養していれば十分な風邪や転倒でも、入院につながるかもしれないのです。ちょっとした具合の悪さをきっかけに、要介護者となる場合もあるでしょう。
十分な意思表示ができない状態に陥ると、希望する医療を受けられない可能性があります。あらかじめ治療を受ける病院や延命治療・臓器提供などについて、意思表示をはっきりさせておくことが大切です。
3-2-1.医療にかかるお金はどうする?
入院や通院が必要になれば、医療費がかかります。病気によっては高額な医療費がかかるケースもあるでしょう。万が一の事態に備え、保険を見直すことが大切です。
もし現時点で保険へ加入していないなら、できるだけ早いタイミングで加入を検討するとよいでしょう。高齢になってからでは保険料が高額になりやすい上、持病が原因で加入できないおそれもあります。
3-3.老人ホームのこと
老人ホームについても、あらかじめ希望をはっきりとさせておくとよいでしょう。何軒もの老人ホームを見て回るのは大変なことに加え、契約について理解し入居を決めるには判断力を要求されるからです。
このとき老後の暮らしについての希望をはっきりさせておくと、判断しやすくなります。例えば食事を自分で作りたいならキッチン付きがよいですし、運動が好きならジムのある施設が向いているでしょう。
具体的な施設を決定していなくても、早い段階でケア付き有料老人ホームへ入居するのか、要介護度が高くなったときに特別養護老人ホームを利用するのか、大まかな方向性だけでも決めておくとスムーズです。
4.最期を迎えたときのことを考える

葬儀やお墓・財産について希望を明らかにしておくこともポイントといえます。具体的にどのような点について考えておくとよいのでしょうか?
4-1.葬儀やお墓のこと
希望の『葬儀』があるなら終活ノートへまとめておきます。葬儀の形態はもちろん、連絡先リストも作成しておくと分かりやすいでしょう。
加えて『お墓』についても検討します。跡継ぎのいらないお墓や散骨する方法もあるため、下調べして希望に合うものを選びます。
近年では友人同士で同じお墓に入る『墓友』が話題です。おひとりさま同士でつながり、生前は友人として支え合い死後は供養し合います。このような新しいつながりも検討するとよいでしょう。
4-2.遺言書を書いておく
法的に有効な遺言書を作成しておくと、財産をお世話になった人へ譲ったり寄付したりできます。遺言書は『自筆証書遺言』『公正証書遺言』『秘密証書遺言』の3種類です。
この中でも公正証書遺言であれば、専門家とともに作成するため、正しく有効な遺言書が完成します。作成した遺言書は公証役場へ保管されるため、紛失のリスクも抑えられる方法です。
終活ノートへも財産について記載はできますが、それだけでは法的な効力は発生しません。有効な遺言書を作成しておくと希望通りの手続きが可能です。
5.終活に関連する制度を知っておこう

財産の管理や死後の手続きについて任せられる制度があります。どのような仕組みで何を任せられるのか把握しておけば、終活の選択肢を広げられるでしょう。
5-1.財産管理契約
財産の管理を任せる制度としてよく知られているのが『成年後見制度』です。しかしこの制度では判断能力が減退していることが利用の条件となっています。
判断能力が正常なうちから管理を任せるには『財産管理契約』を利用しましょう。元気で十分な判断能力のあるうちに、希望の内容に沿って信頼できる相手に管理を任せられます。また死後の処理も依頼することが可能です。
ただし財産管理契約では公正証書の作成も後見登記も行われません。加えて公的な監督者もいないため、管理を任された人物のチェックが難しい制度です。
5-2.任意後見制度
判断能力があるうちに任意後見人や委任する内容を公正証書として残す制度を『任意後見制度』といいます。実際に実行されるのは、判断能力が不十分になった際です。
任意後見人は家庭裁判所で選ばれます。弁護士・司法書士・社会福祉士や福祉に関わる法人が選ばれるケースが多く、親族が選出されることはありません。
おひとりさまで身元保証人を立てられない場合、施設へ入所するときの条件として任意後見制度の利用が必要とされるケースがあります。
5-3.死後事務委任契約
死後にはさまざまな手続きが必要です。死亡届や健康保険の手続きといった行政上の手続きはもちろん、埋葬や永代供養に関する事務手続きなどもあります。
入院していたなら入院費用の清算、施設へ入所していたなら利用料の清算や退去の手続きなどが必要です。またSNSやブログなどインターネット上のサービスや、パソコンやスマホ内の情報の処理もしなければいけません。
『死後事務委任契約』を結べば、これらの手続きを全て任せられます。銀行が提供しているケースもあるサービスです。
ほかに葬儀に特化した『葬儀信託』も利用できます。契約通りに葬儀が行われると、銀行や信託銀行へ預けた資金から費用が支払われる仕組みです。
6.自分らしく生きるために納得できる選択を

おひとりさまで暮らしていると、老後の生活や死後の手続きに不安を感じることもあるでしょう。このような不安を解消するのに役立つのが終活です。
例えば医療や介護・葬儀・お墓などについて終活ノートにまとめます。身の回りの持ち物を整理することや、困ったときに助け合える友人を作るのもよいでしょう。
財産については法的に有効な遺言書を作成するのがおすすめです。税金について心配があるなら『税理士法人チェスター』への相談も検討しましょう。
また財産管理契約や任意後見制度・死後事務委任契約といった制度を利用すると安心を得られます。
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